マチノワ · 2026年 春号
2026-06-12
GEORGE RESTAURANT TSUJI

辻に灯る、
ジョージレストランの洋食。

那覇の辻は、那覇港にもほど近い古い町だ。ゆいレールの旭橋駅から海側へ歩けば、表通りの賑わいから少しずつ生活の気配が濃くなっていく。観光客の動線からはわずかに外れた、この落ち着いた一角に、ジョージレストランはある。創業は1954年。アメリカ統治下の沖縄で、米軍の衛生基準を満たした店だけが掲げられた「Aサイン」の時代に、先代の宮城夫妻がコザで店を開き、ほどなく辻へ移ってきた。それから七十年あまり、ステーキやハンバーグといった洋食と、生地から手作りするタコスを軸に、いまも家族の手で営みが続いている。新しい店が次々と入れ替わる那覇にあって、これだけの年月を一つの味で歩んできた店は貴重だ。観光ガイドの華やかなページよりも、地元の人が当たり前に通ってきた時間の方に、この街の本当の顔がある。古いアメリカと沖縄の空気が溶け合ったこの一軒を、料理から歴史、空間、そして街での使い方まで、順に見ていきたい。

副題

那覇市辻、Aサイン仕込みの洋食とタコスを家族で守る老舗

編集

マチノワ編集部

那覇市辻、Aサイン仕込みの洋食とタコスを家族で守る老舗編集部厳選GEORGE RESTAURANT TSUJI5 POINTS2026年 春号那覇市辻、Aサイン仕込みの洋食とタコスを家族で守る老舗編集部厳選GEORGE RESTAURANT TSUJI5 POINTS2026年 春号
NG-01みなとみらい、昼の海から…NG-02みなとみらい、雨でも濡れ…NG-03桜木町、夜の港を歩くデー…NG-04赤レンガ倉庫から始める、…NG-05大さん橋・山下公園・港の…NG-06馬車道から日本大通りへ、…NG-07関内・日本大通りを歩く。…NG-08山下公園から山手へ、海と…NG-09横浜中華街から港まで、食…NG-10元町から山手の坂を歩く。…NG-11横浜駅、雨の日は地下でつ…NG-12横浜駅、空いた時間を歩く…NG-13野毛、昭和の飲み屋街を歩…NG-14新横浜、新幹線待ちの数時…NG-15新横浜、ライブの前後を歩…NG-16鎌倉、小町通りから八幡宮…NG-17長谷・由比ヶ浜デート半日…NG-18江ノ島、夕陽を追いかける…NG-19鎌倉、雨の日を歩く。濡れ…NG-20川崎、雨でも傘がいらない…NG-21武蔵小杉、子連れで丸一日…NG-22たまプラーザからあざみ野…NG-23箱根湯本で過ごす温泉半日…NG-24小田原、城と海をつなぐ城…NG-25茅ヶ崎、海風をたどって歩…NG-26藤沢、江ノ電の起点をぶら…NG-27横須賀どぶ板通りから始め…NG-28三浦海岸から三崎港へ、海…NG-29港北ニュータウンで子ども…NG-30横浜、初デートの半日コー…NG-31浅草、雷門から川辺まで歩…NG-32上野公園、文化と自然を一…NG-33新宿、余った時間を歩く。…NG-34渋谷から表参道へ、半日デ…NG-36スカイツリー押上・向島 …NG-37銀座から丸の内へ、二人で…NG-38六本木・港区、夜景を上か…NG-39池袋、雨でも一日つぶせる…NG-40東京、雨だからこそ屋内文…NG-41東京、子連れで外さない屋…NG-42東京、初デートの半日コー…NG-43恵比寿・代官山、午後から…NG-44中目黒、目黒川を上流へ歩…NG-45吉祥寺を一日歩く。井の頭…NG-66裏原宿で外さない古着とス…NG-71銀座を歩く、無料の画廊と…NG-75渋谷の週末ブランチ半日コ…NG-76新宿御苑を歩く。緑の中で…NG-77六本木アートトライアング…NG-78丸の内、目利きが選ぶ建築…NG-79表参道、ブランチを歩く朝…NG-80中目黒、朝の目黒川を歩く…NG-81自由が丘、甘い路地を歩く…NG-88豊洲、市場の朝とアートの…NG-90八王子を歩く、玉ねぎラー…NG-102神奈川を週末で歩く。横浜…KS-01梅田から中之島へ、夜景を…KS-02嵐山、渡月橋から竹林を抜…KS-03神戸ハーバーランド、子連…KS-04祇園から清水寺へ、京都デ…CB-01名古屋・栄から大須へ、タ…KS-05難波から道頓堀へ、食い倒…KS-06新世界・通天閣 下町半日…KS-07天王寺・あべの、子どもと…KS-08大阪城公園を歩く。天守閣…KS-09天保山・海遊館 子連れ半…KS-10万博記念公園、子連れで過…KS-11伏見稲荷を歩く。千本鳥居…KS-12きぬかけの路、名刹をつな…KS-13河原町から先斗町へ、鴨川…KS-14宇治、茶の香りを歩く。平…KS-15北野異人館、坂を上って洋…KS-16三宮から南京町、食べて歩…KS-17有馬温泉、湯けむりの坂を…KS-18奈良公園、大仏と鹿のあい…KS-19猿沢池からならまちを歩く…CB-02名駅から則武へ、ものづく…CB-03熱田神宮から水辺へ、半日…CB-04名古屋港、海を見せに行く…CB-05熱海、海へ下る湯けむりの…KY-01天神で立ち寄りたい、地下…KY-02中洲・川端、夕暮れから屋…KY-03大濠公園で過ごす子連れ半…KY-04太宰府、参道から山あいの…KY-05鹿児島・天文館&桜島、火…HK-01札幌の中心を歩く朝さんぽ…HK-02すすきの、灯りを継いで歩…HK-03小樽運河から堺町通りへ、…CG-01広島・平和記念公園、慰霊…CG-02宮島、潮と原始林を歩く。…KT-01川越、蔵の町を歩くさんぽ…G8-01百舌鳥古墳群・大仙公園 …G8-02天神橋筋商店街で立ち寄り…G8-03住吉大社を歩く。反橋から…G8-04銀閣寺から哲学の道を歩く…G8-05二条城・京都御所 半日モ…G8-06姫路城 半日モデルコース…G8-07宝塚で立ち寄りたい花のみ…G8-08城崎温泉、外湯めぐりの夜…G8-09大津、琵琶湖の水辺をたど…G8-10近江八幡・八幡堀を歩く。…G8-11和歌山城・城下半日モデル…G8-12白浜、海の絶景をめぐる。…G8-13名古屋城・本丸御殿 半日…G8-14有松を歩く。絞りの町並み…G8-15三保松原から清水を歩く。…G8-16駿府城・静岡中心 半日モ…G8-17糸島、海とカフェの一日。…G8-18柳川を歩く。掘割の川下り…G8-19函館・元町と夜景 半日モ…G8-20旭川で子連れに立ち寄りた…G8-21尾道を歩く。坂と路地、千…G8-22伊香保温泉、石段街の坂を…G8-23秩父、自然と古社をめぐる…G8-24谷根千を歩く。谷中・根津…G9-01高尾山を歩く。薬王院から…G9-02柴又を歩く。帝釈天の参道…G9-03国営昭和記念公園で一日。…G9-04門前仲町・深川を歩く。八…G9-05箕面大滝へ。紅葉の渓谷を…G9-06四天王寺を歩く。日本仏法…G9-07鞍馬から貴船へ。叡電で抜…G9-08大原・三千院を歩く。苔の…G9-09西宮で立ち寄りたい。甲子…G9-10摩耶山・六甲の夜景。掬星…G9-11斑鳩・法隆寺 半日モデル…G9-12吉野山を歩く。蔵王堂と桜…G9-13犬山城・城下町 半日モデ…G9-14常滑やきもの散歩道を歩く…G9-15浜松・浜名湖で立ち寄りた…G9-16修善寺温泉。竹林の小径と…G9-17小倉城・城下 半日モデル…G9-18宗像大社を歩く。海の正倉…G9-19富良野・美瑛。花畑の丘と…G9-20登別温泉。地獄谷と湯けむ…G9-21鞆の浦を歩く。常夜燈と対…G9-22高野山 半日モデルコース…G9-23比叡山延暦寺を歩く。根本…G9-24富岡製糸場 半日モデルコ…G10-01東寺 半日モデルコース。…G10-02醍醐寺を歩く。五重塔と三…G10-03上賀茂・下鴨を歩く。糺の…G10-04談山神社を歩く。多武峰の…G10-06竹田城跡。天空の城と雲海…G10-07淡路島。明石海峡大橋と花…G10-08びわ湖テラス。山上から望…G10-09紀三井寺と和歌浦を歩く。…G10-10香嵐渓。待月橋ともみじの…G10-11岡崎城 半日モデルコース…G10-12富士宮を歩く。浅間大社の…G10-13大井川・寸又峡。SLと夢…G10-14洞爺湖。火山と湖の絶景め…G10-15知床。世界自然遺産の原生…G10-16霧島神宮を歩く。朱の社殿…
POINT5

那覇市辻、Aサイン仕込みの洋食とタコスを家族で守る老舗

編集部が選んだ5つのポイントを順にご紹介します。那覇の辻は、那覇港にもほど近い古い町だ。ゆいレールの旭橋駅から海側へ歩けば、表通りの賑わいから少しずつ生活の気配が濃くなっていく。観光客の動線からはわずかに外れた、この落ち着いた一角に、ジョージレストランはある。創業は1954年。アメリカ統治下の沖縄で、米軍の衛生基準を満たした店だけが掲げられた「Aサイン」の時代に、先代の宮城夫妻がコザで店を開き、ほどなく辻へ移ってきた。それから七十年あまり、ステーキやハンバーグといった洋食と、生地から手作りするタコスを軸に、いまも家族の手で営みが続いている。新しい店が次々と入れ替わる那覇にあって、これだけの年月を一つの味で歩んできた店は貴重だ。観光ガイドの華やかなページよりも、地元の人が当たり前に通ってきた時間の方に、この街の本当の顔がある。古いアメリカと沖縄の空気が溶け合ったこの一軒を、料理から歴史、空間、そして街での使い方まで、順に見ていきたい。

POINT01
洋食・タコス · 那覇市辻

Aサインの時代から続く、洋食と手作りタコスの軸

ジョージレストランの料理は、戦後のアメリカ統治下に根を持つ沖縄の洋食だ。Aサインとは、米軍の衛生基準を満たした飲食店だけに与えられた営業許可のことで、頭文字のAは「Approved(許可済)」を表す。その厳しい基準をくぐり抜けた時代から、この店はステーキやハンバーグといった洋皿と、メキシコ由来のタコスを並べてきた。とりわけタコスは、創業以来変わらぬ製法で生地から手作りされているのが特徴で、この一品にこの店の来歴が凝縮している。沖縄の食堂文化のなかでも、洋食とタコスを同じ皿の地平で出す店は、米軍とともに育ったこの土地ならではのものだ。デリバリーやテークアウトも数十年来続けてきたといい、地域の食卓に深く根を張ってきたことがうかがえる。流行を追うのではなく、半世紀以上前に確立した味の輪郭を守り続けている。その一貫が、長く通う人の信頼を支えてきた——それが、ジョージレストランをわざわざ辻まで訪ねる、いちばんの理由になる。

創業1954年(Aサイン時代に開業)
看板手作りタコス・洋食プレート
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POINT02
老舗・家族経営 · 那覇市辻

七十年を家族で継ぐ、辻の食卓

この店が長く愛されてきた理由は、味だけではない。先代の宮城郁夫さん・苗子さん夫妻が1954年にコザで開業し、まもなく辻へ移ってからずっと、店は家族の手で受け継がれてきた。いまは息子の宮城健さんが店長を務め、姉や妹も加わって、厨房と客席を家族で切り盛りしている。世代をまたいで同じ厨房に立ち続けるということは、レシピだけでなく、客との距離の取り方や、皿の温度のようなものまで引き継がれるということだ。注文を受け、皿を運び、見送るまでの一連の所作に、急いでいない温かさがある。古くからの常連が世代を越えて通い、観光で立ち寄った人が次の沖縄でまた扉を開ける——そういう積み重ねが、七十年という時間の厚みになっている。新しい店が次々と生まれては消える那覇の飲食地図のなかで、変わらずそこにある安心感は、一度の食事だけでは測れない価値だ。誰かにとっての「いつもの店」であり続けてきたこと自体が、この一軒の実力をいちばん雄弁に語っている。

運営宮城家による家族経営
歩みコザで創業後、辻へ移転して継続
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POINT03
メニュー · 那覇市辻

ランチプレートからタコライスまで、迷う楽しさ

メニューの幅広さも、この店の楽しみどころだ。看板のひとつが、ワンプレートにおかずを盛り合わせたランチで、ボリュームに応じてA・B・Cと段階が分かれ、スープも付く。トンカツやハンバーグといった洋食の定番を少しずつ載せたプレートは、いろいろまとめて味わいたい人にちょうどいい。沖縄らしい一皿を求めるなら、ひき肉と野菜をご飯にのせたタコライスや、手作り生地のタコスがいい。タコスは個数で選べるので、少人数なら軽めに、大人数なら多めにと融通がきく。さらにハンバーグステーキやピザまで揃い、洋食堂でありながら選択肢は思いのほか多い。一人で来て定番のランチを頼むのもいいし、何人かで来てタコスやピザを分け合えば、皿の上に沖縄の戦後食文化が一通り並ぶ。価格や品書きは時期によって動くことがあるので、訪れる前に電話や店頭で最新のメニューを確かめておくと、当日の注文がスムーズだ。

定番A・B・Cランチ(スープ付き)
沖縄の味タコライス・手作りタコス・ピザ
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POINT04
空間・雰囲気 · 那覇市辻

アメリカと沖縄が同居する、家庭的な店内

店の空気は、料理の来歴をそのまま映している。古いアメリカと沖縄が溶け合ったような、どこか懐かしい設えのなかで、欧米の家庭に招かれたような温かさで迎えてくれる——そう語られてきた店だ。きらびやかな高級レストランではなく、肩の力を抜いて長居できる食堂の気安さがある。だからこそ、一人で昼にふらりと立ち寄って黙々とプレートを平らげるのも似合うし、家族連れで賑やかにテーブルを囲むのも収まりがいい。子ども連れの普段使いから、年配の常連がいつもの席で過ごす午後まで、客層の幅が広いのもこういう店の強みだ。観光の途中に地元の暮らしの匂いを感じたい旅行者にとっても、こうした一軒は記憶に残りやすい。流行の内装に作り替えるのではなく、長い時間が自然に染み込んだ空間そのものが、この店のもてなしになっている。誰と来ても気負わずに過ごせる——それが、辻でこの店が果たしてきた役割だ。

雰囲気アメリカと沖縄が同居する家庭的な空間
向く人一人・家族連れ・旅行者まで幅広く
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POINT05
アクセス・街歩き · 那覇市辻・旭橋

旭橋から辻へ、那覇港を望む街歩きの締めに

店があるのは那覇市辻、ゆいレールの旭橋駅から海側へ歩いた一角だ。辻は那覇でも古い歴史を持つ町で、かつては花街として栄えた面影をいまも町並みのそこここに残している。近くには那覇港が広がり、海沿いまで足をのばせば波の上ビーチや波上宮も射程に入る。観光の中心である国際通りからも遠くないため、昼に市街を歩き回ったあと、少し外れたこの辺りまで下りてきて食事をする、という組み立てがしやすい。逆に、この店で腹ごしらえをしてから海辺へ向かう順路も気持ちがいい。駐車場はないので、車で向かうなら近隣のコインパーキングを当てにするか、モノレールで旭橋まで来て歩くのが現実的だ。港町の歴史が積もった通りを抜けて扉を開ける——その道のりごと味わうと、一皿の洋食がぐっと立体的になる。歩いて来られる立地は、ゆっくり食事を楽しみたい日にも、海辺の散歩とつなげたい日にも心強い。

最寄りゆいレール旭橋駅から徒歩圏
周辺那覇港・波の上ビーチ・国際通り
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編集部のひとこと
戦後の沖縄が抱え込んだ時間が、辻の一角にそのまま残っている。ジョージレストランは、観光名所としてではなく、誰かの日常のご飯どころとして七十年を生きてきた一軒だ。那覇で洋食とタコスを探すなら、この店が辻で歩んできた年月ごと味わってほしい。ぜひ覚えておきたい老舗です。
マチノワ編集部
編集後記

最後に、歩き方

1954年から数えて七十年あまり。辻の一角でこれだけ長く灯りをともし続ける店は、那覇でもそう多くない。だからこの一軒は、ただ腹を満たす目的地というより、街の時間を体に入れる場所として向いている。一人なら昼どきに立ち寄って、ランチプレートを一皿。スープまで飲み干せば、午後の街歩きへ軽い足取りで出ていける。家族や友人と来るなら、タコスやピザ、タコライスを分け合って、戦後の沖縄が育てた味を皆でひと巡りするのが楽しい。所要は食事だけなら一時間ほど、ゆっくり長居しても気詰まりにならない店だ。予算は頼む皿で上下するが、気軽に試せる価格帯から始められる。駐車場がないので、車なら近隣のコインパーキング、身軽に動くならモノレールで旭橋まで来て歩くのがいい。食後にそのまま那覇港や波の上の海辺へ足をのばせば、戦後から続く店の余韻を、港町の風景のなかで反芻できる。営業時間や定休日、品書きは時期で変わることがあるため、出かける前に電話で一度確かめておくと確実だ。辻の古い通りを抜けて、七十年続く洋食の灯りへ——その道のりまで含めて、ここでの一食になる。観光のハイライトを巡るだけでは出会えない沖縄が、辻のこの皿の上には、いまも静かに残っている。

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