西宮の名水「宮水」で淹れる、店の芯になる一杯
この店の芯にあるのは、地名を冠した宮水で淹れるコーヒーだ。宮水は西宮の地下から湧く水で、古くから灘五郷の酒造りを支えてきた名水として知られている。仕込み水ひとつで酒の味が変わるように、コーヒーもまた水で表情を変える飲み物だ。トム・トムはその宮水を使って一杯を淹れることで、この街でしか出せない味わいを日常の喫茶に持ち込んでいる。豆を挽き、湯を落とすという当たり前の所作の中に、西宮という土地の水が静かに効いている——そう思って飲むと、何気ない一杯にも土地の物語が重なって見えてくる。朝の出勤前にカウンターで一杯流し込む人もいれば、ランチのあとにゆっくり味わう人もいる。コーヒーが主役にも脇役にもなれるのが喫茶店の懐の深さで、ここではその一杯の足元に、街の水が流れている。まずはこの宮水コーヒーを頼んでみると、店の性格がいちばん素直に伝わってくる。