店主が選ぶ天然物の鮮魚を主役に据えた夜
くすの樹の柱は、店主が市場で目利きした天然物の鮮魚にある。場所柄、目の前にあるのは近江町市場で、朝のうちに選び抜かれたその日の魚が、夜のコースや一品料理にそのまま乗ってくる。看板料理として知られているのは、のどぐろの蒸し寿司。脂ののったのどぐろを寿司にして蒸しあげるという、金沢らしい一品だ。冬場は鰤しゃぶや香箱蟹、夏は岩牡蠣など、北陸の旬がそのまま品書きに反映されていく。割烹と居酒屋のあいだに線を引いて、肩ひじを張らずに食べさせる構えで、造り、揚げ物、蒸し物、焼き物といった割烹の基本を一通り組み立てながら、価格帯はディナー平均で9,000円前後と、観光客向けの料亭よりも一段下りた水準にまとめている。一人で気軽にカウンターに座って造りと地酒を一杯から始めても、二人や数人でコースを通しでもらっても、どちらの夜にも向くバランスの良さがある。