マチノワ · 2026年 春号
2026-08-18
TORI TO MAGURO KAME TAKAYAMA

鳥ト鮪 かめ、
高山の夜に海の皿。

山奥で三崎港の鮪を食べてほしい——東京から高山へ移り住んだ店主がそう考えて開いたのが、朝日町の鳥ト鮪 かめだ。三浦半島の突端にある三崎港から、飛騨の山あいまで。地図の上では遠回りに見えるこの距離が、そのまま店の看板になっている。もう一方の主役は奥美濃古地鶏で、岐阜で育った地鶏を炭火で焼いた串が、海から届いた鮪の皿と同じカウンターに並ぶ。高山の夜は、観光客が古い町並みから引き上げたあたりで、地元の人の時間へ静かに切り替わる。十七時に暖簾が出て、日付が変わる頃まで灯りが続くこの店は、その切り替わりの前後どちらにも居場所を持っている。旅の途中で入っても、仕事帰りに寄っても成立する、そういう懐の深さがある一軒だ。

副題

焼鳥と鮪の居酒屋・高山市朝日町・夕方から深夜までの一軒

編集

マチノワ編集部

焼鳥と鮪の居酒屋・高山市朝日町・夕方から深夜までの一軒✦編集部厳選✦TORI TO MAGURO KAME TAKAYAMA✦5 POINTS✦2026年 春号✦焼鳥と鮪の居酒屋・高山市朝日町・夕方から深夜までの一軒✦編集部厳選✦TORI TO MAGURO KAME TAKAYAMA✦5 POINTS✦2026年 春号✦
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POINT5

焼鳥と鮪の居酒屋・高山市朝日町・夕方から深夜までの一軒。

編集部が選んだ5つのポイントを順にご紹介します。山奥で三崎港の鮪を食べてほしい——東京から高山へ移り住んだ店主がそう考えて開いたのが、朝日町の鳥ト鮪 かめだ。三浦半島の突端にある三崎港から、飛騨の山あいまで。地図の上では遠回りに見えるこの距離が、そのまま店の看板になっている。もう一方の主役は奥美濃古地鶏で、岐阜で育った地鶏を炭火で焼いた串が、海から届いた鮪の皿と同じカウンターに並ぶ。高山の夜は、観光客が古い町並みから引き上げたあたりで、地元の人の時間へ静かに切り替わる。十七時に暖簾が出て、日付が変わる頃まで灯りが続くこの店は、その切り替わりの前後どちらにも居場所を持っている。旅の途中で入っても、仕事帰りに寄っても成立する、そういう懐の深さがある一軒だ。

POINT01
焼鳥・炭火 · 高山市朝日町

奥美濃古地鶏を炭火で焼く、串の一本目から

店名の頭に置かれているのは鳥のほうだ。使うのは奥美濃古地鶏。岐阜県で育てられた地鶏を、炭火で焼いていく。ぽんじり、皮、心臓といった部位ごとの串が並び、鶏以外では豚バラも焼き台に乗る。炭火は火力が立ち上がるのが早く、表面を短い時間で締めながら中まで火を通せるため、脂の多い部位ほど焼き手の判断が出る。ぽんじりのように脂が主役になる部位を早い段階で頼んでおくと、この店の焼き方の輪郭がつかみやすい。串だけで完結しない構成になっているのも特徴で、鶏モツ煮、明石焼き風の出汁巻き玉子、テリヤキ味のポテトサラダといった一品が用意されている。串が焼き上がるまでの間を埋める役割もあるが、それ以上に、二時間ほどの滞在を組み立てるための部品として効いてくる。焼鳥のカウンターでは、注文の順番がそのまま夜の流れになる。軽い一品から入り、串を重ね、途中で刺身を挟み、最後に麺か飯で締める——その全部がこの一軒の中で完結する。

鶏奥美濃古地鶏を炭火で。ぽんじり・皮・心臓などの部位串、豚バラも
一品鶏モツ煮、明石焼き風の出汁巻き玉子、テリヤキポテトサラダ
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POINT02
鮪・鮮魚 · 高山市朝日町

三崎港から飛騨へ。山の中で鮪を出すという選択

高山は海に面していない。飛騨の山に囲まれた盆地で、夜の選択肢といえば飛騨牛か蕎麦か、という分岐になりやすい土地でもある。かめが立っているのはその分岐の外側だ。神奈川・三崎港から鮪を直送し、赤身、中トロ、びんちょうまぐろを一皿に盛る。店名の後半、鮪の二文字はここに掛かっている。東京から移り住んだ店主が、山奥で三崎港の鮪を食べてほしいという発想から店を始めた、という成り立ちを聞くと、この一皿の位置づけが分かりやすい。観光地の飲食店が土地の名物へ寄っていくのが自然な流れだとすれば、この店はあえて逆を張っている。しかも片方だけに振り切るのではなく、岐阜の地鶏と神奈川の鮪を同じ品書きに並べたまま両立させている。串の煙の向こうに刺身の皿が置かれる光景は、高山の夜ではそう多くない。旅行者にとっては意外性のある一軒であり、地元の人にとっては、街で魚を頼めるという実務的な選択肢になっている。

仕入れ神奈川・三崎港から直送。赤身、中トロ、びんちょうまぐろ
看板鮪の盛り合わせ。店名の後半を担う一皿
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POINT03
鮪料理・ドリンク · 高山市朝日町

刺身で終わらない鮪。ユッケ、白子、そして〆の蕎麦

鮪を仕入れている店の面白さは、刺身の先にどれだけ手札があるかで決まる。かめの品書きには、鮪のユッケ、鮪の白子の唐揚げ、トロタク、葱鮪の〆蕎麦といった名前が並ぶ。ユッケには雲丹と海苔のソースが合わせられ、トロタクは鮪だけで組み立てられる。白子の唐揚げは、鮪をまるごと扱う店でなければ品書きに載りにくい部位だ。締めに葱鮪の蕎麦を置いているのも、この店が鮪を主軸に据えている証拠と言っていい。刺身、和え物、揚げ物、麺——同じ素材が形を変えながら夜の最後まで出てくる構成になっている。飲みものではレモンサワーが五種類そろい、酒が得意でない人に向けたクラフトレモネードも用意されている。串と刺身を行き来する食べ方には、酸のある飲みものがよく合う。炭で焼いた脂と、冷たい刺身と、酸——この三つが回り始めると、注文は自然と止まらなくなる。頼む順番を先に決めておくより、その日の腹の減り方に合わせて一皿ずつ足していくほうが、この品書きは楽しみやすい。品書きの内容や取り扱いは時期によって動くので、狙っている一皿があるなら来店前に問い合わせておくと空振りがない。

鮪の品書きユッケ(雲丹と海苔のソース)、白子の唐揚げ、トロタク、葱鮪の〆蕎麦
飲みものレモンサワーは五種類。酒が得意でない人向けのクラフトレモネードも
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POINT04
店内・席 · 高山市朝日町

二十九席、曲がったカウンター。一人でも六人でも収まる

席数は全部で二十九。カウンター、テーブル席に加えて、六名程度まで使える半個室が用意されている。この構成は使い勝手がいい。一人で串を数本という夜も、二人で刺身を分ける夜も、六人で顔を合わせる席も、同じ店で成立する。カウンターは曲線を描く形で設計されていて、隣り合った客との距離や視線がまっすぐぶつからないように配慮されている。直線のカウンターだと肩が並びすぎて落ち着かない場面があるが、緩く曲がっているだけで体の向きに自由が生まれる。一人客が長居しやすいのは、こういう細部の設計によるところが大きい。全席禁煙のため、煙が苦手な人や食事目的の来店でも身構えなくていい。半個室は数に限りがあるので、人数がまとまっている日は席の種類まで指定して押さえておくのが確実だ。十名を超える予約や貸切を考えている場合は、日数に余裕をもって相談しておきたい。席の予約はネット予約から取れるようになっており、支払いは現金のほかクレジットカードやPayPayにも対応している。旅先で財布の中身を気にせずに済むのは、地味だが効いてくる部分だ。

席全二十九席。カウンター、テーブル席、六名程度まで使える半個室
環境全席禁煙。カウンターは曲線を描く設計
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POINT05
アクセス・街歩き · 高山市朝日町

高山駅から歩いて十数分、古い町並みの夜の側へ

店があるのは高山市朝日町。JR高山駅からは徒歩で十二、三分ほどの距離で、宮川を渡った市街側にあたる。この一帯は、昼に人が集まる場所と夜に人が集まる場所が徒歩数分の中に同居しているのが特徴だ。上三之町の古い町並み、宮川沿いの朝市、高山陣屋——高山観光の主要な行き先はいずれも歩いて回れる範囲にある。ただし朝市は午前中に立ち、店の暖簾が出るのは十七時。昼の高山と夜の高山は時間帯で完全に入れ替わるので、一日の設計はそこを軸に組むといい。観光を昼のうちに終わらせ、市街の宿に荷物を置いて、暗くなってから歩き出す。この流れなら移動に無駄が出ないうえ、飲んだあとの帰り道も短い。朝日町は市街の飲食店が集まる一帯で、暗くなってから歩くと昼とは表情が変わる。観光の動線からは少し外れるぶん、店を目当てに歩いてくる人が多い場所でもある。専用駐車場はないため、車で高山へ入る日は市街のコインパーキングに停めるか、宿の駐車場を使って徒歩で向かう前提にしておくのがいい。

アクセスJR高山駅から徒歩十二、三分。古い町並みや宮川沿いから歩いて行ける距離
駐車場専用駐車場なし。市街のコインパーキングか、宿から徒歩で
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編集部のひとこと
高山で夜に食べるものを決めるとき、話は飛騨牛か蕎麦かに落ち着きやすい。かめはそのどちらでもない。岐阜の地鶏を焼く炭の匂いと、三崎港から届いた鮪の皿が、同じカウンターの上に並ぶ。海のない土地でこの二枚看板を掲げ続けていること自体が、この店の性格をよく表している。
マチノワ編集部
編集後記末

最後に、歩き方。

暖簾が出るのは十七時、料理の注文は二十三時まで受け付けて、灯りが落ちるのは日付が変わる頃。この時間の幅が、高山ではよく効く。観光の足で動く日は古い町並みや朝市を昼のうちに片づけ、宿に荷物を置いてから歩いて向かえばいいし、夕食を早めに済ませた日の二軒目としても入れる。注文で迷ったら、鮪の盛り合わせを一皿置いて、そこから串を数本ずつ足していく順番が分かりやすい。店名とは逆の順序になるが、海の皿を先に出しておくほうが、この店が何をやろうとしている一軒なのかは早く伝わる。二人で使う夜なら、カウンターの曲がったあたりに並んで座ると会話がしやすい。人数がまとまるなら半個室が六名程度まで。十名を超える席や貸切を考えている場合は、日数に余裕をもって相談しておきたい。滞在の目安は二時間ほど、予算はディナーで四千円台から六千円前後を見ておけば大きく外れない。これに一人あたりの席料が別途かかるので、会計の見立てに入れておくといい。定休は水曜、不定休が入ることもある。営業時間や品書きは時期で動くため、出かける前に店のSNSかネット予約ページで最新の状況を確かめておくと確実だ。

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