店の中央の銅鍋で揚げる、注文後の一皿
天ノ松の天ぷらは、店の中央に据えられた銅鍋で、注文が入ってから一つずつ揚げられる。銅鍋は熱の伝わり方が穏やかで、衣がむらなく色づきやすいとされる道具で、揚げ場を店の中心に置くことで、客は調理の様子を目の前で見ながら食事を待つことになる。カウンター席に座れば、油がはぜる音や立ちのぼる香りまで含めて、揚げたてが運ばれてくる時間そのものを楽しめる。名物として案内されているのが、特製のネギだれをからめた豚天だ。天ぷらというと魚介や野菜を思い浮かべる人が多いかもしれないが、肉厚な豚肉を天ぷらにし、そこに薬味を効かせたたれを合わせる組み合わせは、この店を象徴する一皿になっている。ご飯と味噌汁はおかわり自由と案内されており、天ぷらを主役にしながらも食事としての満足感を作る設計になっている点も、この店らしさにつながっている。衣を薄くまとわせて素材の輪郭を残す揚げ方は、単品でつまむときも定食として頼むときも印象が変わらず、注文の仕方によって満足度が上下しにくいのも、通いやすさを支えている理由の一つだ。