奥越産コシヒカリを湧き水で炊き、山吹酢で締めるシャリ
寿司屋の性格は、ネタより先にシャリに出る。初味寿司 本店が使うのは奥越産のコシヒカリだ。奥越は福井県の東部、九頭竜川の上流域にあたる山あいの地域で、県内でも米の産地として名前が挙がる土地である。その米を湧き水で炊き、山吹酢で仕上げる。この三つを店が公表しているという事実が、そのまま店の姿勢を語っている。産地を選び、水を選び、酢を選ぶ。どれか一つでも変えれば口に入った瞬間の印象が変わるのが寿司という食べ物で、そこを固定しているということは、握りの完成形が店の中ではっきり決まっているということだ。ネタは福井の市場のいわゆる二番ぜりで仕入れる。旬の魚と、あまり流通に乗らない変わり種の魚。日本海に面した県で、その日の海が持ってきたものを受け取る仕入れ方だ。つまり米と酢と水は動かさず、魚のほうを季節に合わせて動かしていく。同じ品書きを頼んでも、春と冬では皿の上が入れ替わる。通い方によって発見の量が変わるのは、この設計のおかげだ。