マチノワ · 2026年 春号
2026-09-08
KISAN HITOTSUGI KARIYA

刈谷・一ツ木町のいもかわうどんと石臼碾きそば、きさんが打ち続ける三つの麺

いもかわうどん、という麺の名前を聞いたことがあるだろうか。江戸時代の東海道でその名を知られ、名古屋のきしめんの元祖ともいわれる平打ちの麺だ。ところが出す店も打ち方も長く途絶えていて、いまこの土地で食べられる場所はごく限られている。愛知県刈谷市一ツ木町。名鉄名古屋本線の一ツ木駅と富士松駅のちょうど中ほど、国道一号の知立バイパスが近くを走る一角に、そのいもかわうどんを打ち続けている一軒がある。石臼碾きそば・味噌煮込みうどんのきさん。北海道産のそばの実をその都度店内で碾き、岡崎の八丁味噌をベースにした自家ブレンドで煮込み、地元産の小麦で平麺を打つ。麺の店として、性格の違う三つの仕事を同時に抱えている店だ。木を基調にした店内には、墨で「一日一麺」と書かれた紙が一枚掛かっている。その四文字が、この店の姿勢をいちばん短く言い表している。

副題

そば・うどん専門 / 愛知県刈谷市一ツ木町 / ランチ・週末の夜

編集

マチノワ編集部

そば・うどん専門 / 愛知県刈谷市一ツ木町 / ランチ・週末の夜✦編集部厳選✦KISAN HITOTSUGI KARIYA✦5 POINTS✦2026年 春号✦そば・うどん専門 / 愛知県刈谷市一ツ木町 / ランチ・週末の夜✦編集部厳選✦KISAN HITOTSUGI KARIYA✦5 POINTS✦2026年 春号✦
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POINT5

そば・うどん専門。

編集部が選んだ5つのポイントを順にご紹介します。いもかわうどん、という麺の名前を聞いたことがあるだろうか。江戸時代の東海道でその名を知られ、名古屋のきしめんの元祖ともいわれる平打ちの麺だ。ところが出す店も打ち方も長く途絶えていて、いまこの土地で食べられる場所はごく限られている。愛知県刈谷市一ツ木町。名鉄名古屋本線の一ツ木駅と富士松駅のちょうど中ほど、国道一号の知立バイパスが近くを走る一角に、そのいもかわうどんを打ち続けている一軒がある。石臼碾きそば・味噌煮込みうどんのきさん。北海道産のそばの実をその都度店内で碾き、岡崎の八丁味噌をベースにした自家ブレンドで煮込み、地元産の小麦で平麺を打つ。麺の店として、性格の違う三つの仕事を同時に抱えている店だ。木を基調にした店内には、墨で「一日一麺」と書かれた紙が一枚掛かっている。その四文字が、この店の姿勢をいちばん短く言い表している。

POINT01
いもかわうどん · 刈谷市一ツ木町

刈谷で唯一といわれる、いもかわうどん。塩を使わない平麺の弾力

きさんの看板は、いもかわうどんだ。江戸時代、東海道を行き来する人々のあいだで名を知られた平打ちの麺で、名古屋のきしめんの元祖ともいわれている。刈谷発祥とされながら、いつのまにか出す店も打ち方も途絶えていた——それを、この店が地域とともに復刻した。刈谷市観光協会も、地元の小麦粉で打った昔ながらのいもかわうどんとして紹介している一杯だ。使うのは地元産の小麦。特徴的なのは、生地に食塩を使わないことだという。塩を入れないぶん小麦そのものの香りが立ち、噛んだときの弾力が強く残る。なめらかなのど越しで一気に手繰る、一般的なうどんの感覚とは方向が違う。幅の広い平麺を、あごを使って味わう麺だと考えたほうが近い。公式サイトによれば、この店のメニューはどれも麺をいもかわうどんに替えられるという。そばの気分で来た日でも、天ぷらを付けた日でも、最終的にこの麺へ行き着ける設計になっている。何を頼むか迷うなら、この一択で構わない。品書きや価格は時期で動くことがあるので、出かける前に公式サイトを一度のぞいておくと確実だ。

看板いもかわうどん。地元産小麦を使い、生地に食塩を使わない平打ち麺
由来江戸時代の東海道の名物で、きしめんの元祖ともいわれる。刈谷発祥とされる
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POINT02
店の立ち位置 · 刈谷市一ツ木町

そば・味噌煮込み・いもかわ。産地も製法も別々に組んだ三つの麺仕事

屋号を正しく書くと、石臼碾きそば・味噌煮込みうどんのきさん、となる。いもかわうどんが看板でありながら、店の名前に入っているのはそばと味噌煮込みのほうだ。つまりこの一軒は、性格の違う三つの麺仕事を同時に抱えている。そばは北海道産のそばの実を仕入れ、その都度店内の石臼で碾く。丸抜きの二八で打つ。碾いてから打つまでの時間が短いほど香りが残るというのは、そばを好きな人ならよく知っているところだろう。味噌煮込みは岡崎の八丁味噌をベースにしたオリジナルブレンドに、天然のだしを合わせている。愛知の味噌煮込みは店ごとの味噌の配合で顔が変わるので、ここは八丁の色が濃い側だと思って向かえばいい。そしていもかわうどんは地元産の小麦。産地も製法も、麺ごとに別々に組み立てられている。ふつう、うどんの店はうどんが強く、そばの店はそばが強い。両方を看板に掲げたうえで、土地から消えかけた麺まで背負っている店はそう多くない。通う理由はここにある。同じ暖簾をくぐって、その日の気分で違う麺に当たれる。

そば北海道産のそばの実を店内の石臼でその都度碾き、丸抜きの二八で打つ
味噌岡崎の八丁味噌をベースにしたオリジナルブレンドに天然だしを合わせる
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POINT03
メニュー · 刈谷市一ツ木町

そばと煮込みの間を天ぷらが横断する。味噌かつと地酒まで揃う品書き

品書きを眺めると、この店の幅が見えてくる。そば側にはざるそば、天ぷらざるそば、えび天そば。うどん側には玉子入りの味噌煮込みうどん、海老フライのカレー煮込み、いもかわのえび天味噌煮込み。そばとうどんの間を、天ぷらとえび天が横断している格好だ。公式サイトに掲載されている価格帯は、おおよそ七百円台から二千四百円台まで。一杯で軽く済ませることも、天ぷらを付けて一食として組み立てることもできる幅がある。麺以外では、国産の豚肉を使った味噌かつと、季節の素材を使った天ぷらが紹介されている。愛知の味噌文化を、煮込みとかつという二方向から味わえるということでもある。オリジナルの地酒も置いている。夜に来られる日なら、天ぷらと一合で始めて、締めに麺へ移る流れが組める。ただし夜の営業は曜日が限られているので、その点は最後に触れたい。メニュー構成や価格は変更される場合があるため、行く前に店へ問い合わせておくと安心だ。

品書きざるそば・天ぷらざるそば・味噌煮込みうどん・いもかわうどん・味噌かつ・季節の天ぷら
価格帯公式サイト掲載で約700円台〜2,400円台。オリジナルの地酒もあり
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POINT04
店内・席 · 刈谷市一ツ木町

梁を見せた高い天井と座敷。一人でも家族連れでも収まる四十席

店内は木を基調にしている。太い梁を見せた高い天井から和紙の丸い照明が下がり、白壁と木の柱で組んだ和の造りだ。壁の高いところには来店した人たちの写真がずらりと並び、その隣に墨で「一日一麺」と書いた紙が一枚。入口脇には純国内産ざるそばの幟が立っている。和風に見せるために設えた内装というより、日々の営みがそのまま壁に残っていった空間だと感じる。席はテーブルと座敷の組み合わせで、総席数は四十席ほどと案内されている。座敷側は座布団を敷いたテーブル席になっていて、靴を脱いで上がる形だ。子ども連れでも身構えずに済むし、年配の家族と一緒でも座りやすい。カウンターの代わりに円卓が置かれているという紹介もあり、一人で入っても居場所に困らない。昼は一人で手早く、週末の夜は座敷で長めに——同じ一軒で、二つの使い方が成り立つ。席の詳細や大人数の可否はその日の状況で変わることもあるので、人数がまとまるときは先に電話を入れておきたい。

席総席数40席前後。テーブル席と座敷(座布団を敷いたテーブル形式)の組み合わせ
向く相手一人の昼食、家族連れ、年配の家族との食事。座敷があるので長居もしやすい
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POINT05
アクセス・営業時間 · 刈谷市一ツ木町

駅から徒歩十五分、駐車場八台。曜日で表情が変わる営業の組み立て

住所は愛知県刈谷市一ツ木町七丁目十四番一号。名鉄名古屋本線の一ツ木駅と富士松駅、どちらからも歩いて十五分ほどと案内されている。駅前の店ではない、というのが正直なところだ。そのぶん駐車場が八台分あり、車で向かうのが現実的な選択になる。近くを国道一号の知立バイパスが通っているので、名古屋方面からも岡崎・豊田方面からも、幹線を降りてすぐという位置関係だ。刈谷は自動車産業とともに育ってきた街で、平日の昼に移動の途中で一杯手繰るという使い方が成り立つ立地でもある。営業は昼が十一時から十四時三十分、ラストオーダーは十四時。夜は十八時から二十一時三十分、ラストオーダーは二十時三十分。ただし夜を開けるのは金曜・土曜・日曜に限られ、水曜と木曜は終日休みとなっている。この曜日の条件が、この店でいちばん取り違えやすいところだ。電話は〇五六六-二七-八五三七、予約は〇九〇-一二七〇-八一五三でも受け付けている。営業日や時間は変わることがあるため、予定を組む前に一本かけておくのが確実だろう。

所在・連絡先〒448-0003 愛知県刈谷市一ツ木町7-14-1 / TEL 0566-27-8537(予約 090-1270-8153)
営業昼11:00〜14:30(L.O.14:00)/ 夜18:00〜21:30(L.O.20:30、金土日のみ)水・木定休。駐車場8台
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編集部のひとこと
刈谷でいもかわうどんを食べられるのはここだけ——その一文の重みは、実際に麺を噛んでみると腑に落ちる。塩を使わない平麺の弾力が、慣れたうどんの記憶を少し押し返してくるのだ。石臼碾きのそばと八丁味噌の煮込みまで一軒に揃っているのだから、刈谷で麺と聞いたら、まずここを思い出したい。
マチノワ編集部
編集後記末

最後に、歩き方。

まず頭に入れておきたいのは曜日だ。水曜と木曜は休み、夜が開くのは金曜・土曜・日曜だけ。この二つを取り違えると、着いてから引き返すことになる。平日に行くなら昼一択で、十一時から十四時三十分のあいだ、ラストオーダーは十四時。十二時前に着いておけば、混み合う手前の時間に座れる。所要は一時間を見ておけば足りるだろう。一人で寄るなら円卓かテーブルで手早く一杯。何を頼むか決めかねたら、いもかわうどんにしておけば、この店の芯にいちばん近いところから入れる。家族や友人と行くなら金曜から日曜の夜がいい。十八時に入って、天ぷらと地酒で少し飲んでから麺に移り、二十時三十分のラストオーダーまでに締める。座敷があるので、子ども連れでも年配の家族と一緒でも腰を据えやすい。予算は一杯なら千円前後、天ぷらを付けて二千円台までを見ておけば見当がつく。駅からは一ツ木・富士松のどちらからも十五分ほど歩くため、車のほうが確実だ。駐車場は八台。当然埋まっている日もあるので、人数がまとまる日や時間を押さえたい日は、〇五六六-二七-八五三七に一本かけてから向かいたい。営業時間や品書きについては訪問前に公式情報での確認を。

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