焼き加減を見極める、和牛ステーキの一皿
souvenir-スヴニール-の軸になっているのは、和牛ステーキだ。国産黒毛和牛を使い、六〇グラムから八〇グラム程度の一口大のステーキを、目の前の鉄板で焼き上げていく。塩とこしょうのシンプルな味付けで、肉そのものの質感を引き出すスタイルだ。シェフの手が届く位置で焼かれていくので、焼き加減は繊細に調整されていく。レアに引きすぎない、けれどミディアムより手前に留める絶妙な火加減。そこに、刻んだ青ねぎの香りが加わる。ねぎの爽やかさが和牛の濃厚さを中和し、一口目の印象を決める。タレは甘辛く、肉の旨みを補強する役割を果たしている。ディナーコースの中では、このステーキが最後の一皿に近い位置で出される。それまでに食べた鮮魚、季節野菜を経由して、最後に登場する『締めの肉』という位置付けだ。そのため、一夜を通じた流れの中で、ステーキの価値がより一層高まっていく。肉そのものの質より、『焼き加減と温度』『ねぎの香り』『タレのバランス』という三つの要素が、ステーキの記憶を強くしている店だと感じられる。