1960年代の廃工場が、新しい時間を受け止める
木下商店が入る建物は、1960年代に工場として建てられた。おそらく高度経済成長期の産業遺産で、時代の必要に応じて建てられ、時代が変わるとともに役目を失った。そうした建物は全国に数多く残っているが、たいていはそのまま朽ちていくか、取り壊されるかだ。しかしこの建物は、リノベーションという手で新しく生き返った。天井高く、窓も大きいという工場建築の特性が、そのまま店舗の長所になっている。雑貨が並ぶスペース、カフェコーナー、子どもたちが宿題をする机——それらが同じ空間に並んでいても、建物の広がりがあるぶん、各々が違う時間を過ごしていることが伝わってくる。工場の歴史を完全に消すのではなく、その痕跡を残しながら新しい用途を与えるリノベーション。そういう判断が、この場所の説得力を生んでいるのだと思う。大人がコーヒーを飲む時間、子どもが宿題に取り組む時間。そうした日常の営みを、かつての産業遺産が包み込んでいる。その関係性が面白い店だ。