だし巻き玉子の断面が、この店の仕事を先に語る
酒菜ちゃんちゃんこが公開している写真は、料理を並べたカタログではない。写っているのは一皿だけだ。白地に藍の絵付けが入った角皿、その右手にだし巻き玉子が四切れ。左手前には大根おろしがきれいな山に盛られ、皿の外の小鉢につゆが張られている。奥にはグラスに注がれた飲みものと、木目のあらわなテーブル。それだけの一枚なのに、読み取れることは少なくない。だし巻き玉子は、居酒屋のなかでもごまかしが効かない料理に入る。卵と出汁の比率が高くなるほど巻くのは難しくなり、火が強すぎれば焼き色がつき、弱すぎれば層がつながらない。この写真の切り口は、黄色の層が重なりながらもふちが硬く締まっておらず、断面から出汁がにじんでいるのが見てとれる。大根おろしとつゆを添えるという出し方も、味を濃く作らずに済ませる自信がなければ選びにくい。屋号の「酒菜」が指すのはまさにこの位置の料理だ。主役を張って腹を満たすためではなく、盃を進めるために卓に置かれる皿。店が一枚だけ選んで見せたのがこれだった、という事実そのものが、この店の立ち位置を説明している。メニュー全体の構成は公開の場に出ていないため、目当てがあるなら席で相談するのが早い。