赤ワインではなく日本酒で煮込む、小川亭のビーフシチュー
小川亭の看板料理は、日本酒でじっくり煮込んだビーフシチューだ。欧風料理のビーフシチューといえば赤ワインで煮込むのが一般的だが、小川亭ではあえて日本酒を使うことで、赤ワイン特有の渋みや酸味を抑え、まろやかで奥深い味わいに仕上げている。日本人の好みに合わせた味付けを掲げる店の姿勢が、この一皿に凝縮されていると言っていい。長時間かけて煮込むことで肉はほろりとほどけ、ソースには素材の旨みがじっくりと溶け込む。欧風料理という業態は、フランス料理をベースにしながら日本人の舌に馴染むよう仕立て直してきた、洋食文化のひとつの形だが、小川亭のビーフシチューはその系譜を丁寧に受け継いでいる一皿と言える。赤ワイン煮込みが主流の中であえて日本酒を選んだ判断は、味の好みだけでなく、地元の客に長く通ってもらうための工夫でもあるはずだ。ランチでもディナーでも注文でき、この店を訪れるならまず頼んでおきたい一品だ。桐生で欧風料理と聞いてこの店の名前が挙がるのは、この一皿を長年作り続けてきた積み重ねによるところが大きい。