蕎麦の個性を引き出す、富士山の湧き水での手打ち
蕎麦という食材は、実は非常に繊細だ。同じ品種の蕎麦でも、仕込みに用いる水によって風味が変わり、打つ人の力加減によって食感が変わる。本手打ちそば蕎友館では、その基本になる水として、富士山の湧き水を用いている。毎日その湧き水で蕎麦を打つというのは、蕎麦という食材に対して、いかに真摯に向き合うかという姿勢の表れだ。富士山の湧き水は、蕎麦の個性を最も自然な形で引き出すものとされている。そこに、長野県の「11号種」と北海道の「2-8比」という2つの蕎麦の品種が組み合わさる。季節や料理の特性に合わせて、どちらの品種を用いるかを選択する——それは単なる「在庫管理の工夫」ではなく、蕎麦という食材の個性を最大限に活かすための判断なのだ。毎日手打ちされるそれぞれの蕎麦の一杯一杯に、そうした配慮が詰まっているという事実が、この店を特別にしている。来店する度に、「今日のこの店の蕎麦は、どんな仕込みで、どんな蕎麦の品種で、どんな味わいなのか」という期待感を持たせる営みだ。