マチノワ · 2026年 春号
2026-09-10
TAKOU YAIZU ISHIZU

焼津・石津で四十年余、釜飯と地魚の一軒。多幸が昼と夜で見せる二つの顔

焼津市石津。住宅と工場が入り混じる一角に、黒い看板が立っている。「食鮮酒彩 多幸」——その脇に、一品料理、地魚、宴会、法事と四つの言葉が縦に並ぶ。さらに下の板には、釜飯、せいろご飯、とんかつ。看板ひとつで、この店が引き受けている役割の広さがだいたい分かってしまう。焼津は遠洋漁業の港を持つ町だから、ここで「地魚」の二文字は観光の売り文句ではなく、単に近所の台所の話をしている。創業から四十年あまり。昼は定食と丼、夜は一品と酒、そして節目の日には法事の膳。多幸は石津という住宅地で、その全部を一軒で回してきた。焼津駅からは南へおよそ3キロ、歩いて向かう店ではない。車を停めて、二階建ての建物の一階に入る。そういう距離感の一軒である。

副題

釜飯と地魚の和食店/静岡県焼津市石津/ランチ・宴会・法事

編集

マチノワ編集部

釜飯と地魚の和食店/静岡県焼津市石津/ランチ・宴会・法事✦編集部厳選✦TAKOU YAIZU ISHIZU✦5 POINTS✦2026年 春号✦釜飯と地魚の和食店/静岡県焼津市石津/ランチ・宴会・法事✦編集部厳選✦TAKOU YAIZU ISHIZU✦5 POINTS✦2026年 春号✦
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POINT5

釜飯と地魚の和食店/静岡県焼津市石津/ランチ・宴会・法事。

編集部が選んだ5つのポイントを順にご紹介します。焼津市石津。住宅と工場が入り混じる一角に、黒い看板が立っている。「食鮮酒彩 多幸」——その脇に、一品料理、地魚、宴会、法事と四つの言葉が縦に並ぶ。さらに下の板には、釜飯、せいろご飯、とんかつ。看板ひとつで、この店が引き受けている役割の広さがだいたい分かってしまう。焼津は遠洋漁業の港を持つ町だから、ここで「地魚」の二文字は観光の売り文句ではなく、単に近所の台所の話をしている。創業から四十年あまり。昼は定食と丼、夜は一品と酒、そして節目の日には法事の膳。多幸は石津という住宅地で、その全部を一軒で回してきた。焼津駅からは南へおよそ3キロ、歩いて向かう店ではない。車を停めて、二階建ての建物の一階に入る。そういう距離感の一軒である。

POINT01
地魚・海鮮丼 · 焼津市

港町の日常として出てくる、地魚の丼と刺身

看板の四文字のうち、多幸という店を最初に説明するのは「地魚」の二文字だ。海鮮丼を頼むと、盆の上に丼と小鉢と味噌汁とサラダが一度に載ってくる。丼の中身は、まぐろの赤身と脂ののった部位、白身、ほたて、甘えび、たこ、そして光り物。わさびは丼の上に直接のせられ、刻んだねぎが添えられる。一種類の魚を主役に据えて見せる構成ではなく、その日にある魚を横に並べていく組み方だ。焼津の港に水揚げがある町で暮らしていれば、魚は珍しいものではない。だから多幸の丼も、特別な日のごちそうという顔をしていない。昼に来て、ふつうに食べて、ふつうに帰る。その位置に魚が置かれている。Googleマップの口コミには酢飯の炊き加減に触れる声もあり、丼の土台にも手が入っていることがうかがえる。刺身は盛り合わせでも頼めるので、夜に酒を飲む側から入るなら、まずそこから組み立てるのが分かりやすい。魚が目当てで焼津に来た人にも、この一軒はきちんと応える。

料理海鮮丼・刺身盛り合わせ・地魚の一品
用途ランチ・夜の一杯の入口
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POINT02
定食・揚げ物 · 焼津市

とんかつも中華そばも置く、一軒の懐の深さ

和食店と分類されてはいるが、多幸の品書きはそこで止まらない。ロースとんかつ定食は、揚げ網の上に厚めの一枚が並び、ご飯、味噌汁、ひじきの煮物、漬物、らっきょうが脇を固める。衣の立ち方を見れば、揚げ物を片手間で扱っていないことは分かる。Googleマップの口コミを追うと、釜飯や丼に混じって、とんかつ、ヒレカツ、牛タン、馬刺し、かきフライ、ポークシチューのセットといった言葉が次々に出てくる。和食の一軒でここまで守備範囲を広げると、たいていはどこかが薄くなる。多幸はその広さを維持したまま、四十年にわたって日常の店であり続けている。この幅は、実際に使うときに効いてくる。魚が苦手な人と魚が食べたい人が同じ卓につく、という場面は珍しくない。家族で来ても、職場の同僚と来ても、誰かが我慢する構図になりにくい。一軒で全員の希望が着地する——地方の住宅地において、これは想像以上に重い長所だ。

メニューの幅定食・丼・揚げ物・焼鳥・天ぷら・一品料理
向く人好みが割れるグループ・家族連れ
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POINT03
釜飯・麺 · 焼津市

釜飯とせいろご飯、そして志太で食べる中華そば

看板の下段に、釜飯、せいろご飯、とんかつと三つだけ大きく書かれている。宅配サービスでの店名表記も「釜めし・和食処」で、店が自分の代表作をどう見ているかは一貫している。米を炊いて出す料理を軸に据えた和食処、というのがこの店の自己申告だ。もうひとつ、地元で名前が挙がるのが麺類である。醤油色の澄んだスープに細めの縮れ麺、チャーシュー、めんま、海苔、なると、青ねぎ。Googleマップの口コミでは、これを志太系ラーメンと呼ぶ人もいる。志太は焼津・藤枝・島田あたりを指す古い地域名で、その土地の中華そばの系譜に置いて語られている。ネギトロの小丼と組み合わせた昼のセットも出ており、同じ盆にわさびの小皿が添えられる。なお釜飯は炊き上がりまで時間がかかる場合がある。昼休みが短い日に頼むなら、提供までどれくらいかを注文時に聞いておくと予定が狂わない。

看板メニュー釜飯・せいろご飯
麺類醤油の中華そば・丼とのセットあり
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POINT04
座席・利用シーン · 焼津市

掘りごたつの座敷と、三十人までの宴席

席はカウンター、テーブル、そして掘りごたつの座敷が用意されている。個室という区切りは持たないが、その代わりに座敷を通しで使えば三十人程度の宴席まで組める。看板に宴会と法事の二文字が並んでいるのは、そういう使われ方を実際に引き受けてきたからだ。法事の膳を出す店というのは、その地域で長く信用されていないと務まらない。四十年あまりという年数と、看板のこの二文字が、この店の立ち位置を示している。日常の使い方も幅がある。一人ならカウンターに座って定食を一つ。子ども連れなら掘りごたつの座敷のほうが気楽で、足を下ろせるぶん長居もしやすい。年配の方を連れて行く場合も、座布団に正座を強いられる構造ではないので体への負担が少ない。Googleマップの評価は5点満点中4.0、口コミは93件(同サイト表示)。数字そのものより、釜飯、丼、定食、せいろといった言葉が繰り返し並んでいることのほうが、この店の使われ方をよく表している。同じ座敷が、昼は定食を食べる家族連れの席になり、夜は一品と酒の席に変わる。席のつくりを昼夜で作り分けていないぶん、時間帯によって店の空気だけが入れ替わっていく。どちらか一方だけを見て帰ると、この店の半分しか知らないことになる。

席種カウンター・テーブル・掘りごたつ座敷(個室なし)
宴席最大30名程度・法事の利用にも対応
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POINT05
アクセス・使い方 · 焼津市

駐車場は二か所、車で来る前提の立地

所在地は焼津市石津1143-1。JR焼津駅からはほぼ真南に約3キロで、徒歩を前提にした立地ではない。裏を返せば、駅前の飲食店とは客層も時間の流れ方も違うということだ。観光の動線から外れた住宅地に立ち、来るのは基本的に地元の人と、目的があって車を向けた人になる。駐車場は建物の前に加えて、看板にあるとおり第2駐車場が建物の裏手にある。前が満車でも引き返す必要はない、と看板が先に教えてくれる構造で、この案内があるだけで初めての客の心理的な負担はかなり下がる。焼津の街と組み合わせるなら、港や海側を回ってから昼にここへ入る、という順番が収まりがいい。魚を見て、魚を食べて、車で次へ動く。夜は逆に、この店を終点に置くほうが向いている。運転する人が同行するなら、酒を頼む側と分けて考えておきたい。どうしても車がない場合、駅から歩けば四十分前後を見ておく必要があり、タクシーを使うほうが現実的だ。テイクアウトや宅配に対応している時間帯もあるため、店内で食べる以外の選択肢も一応ある。焼津に泊まっていて夜に一杯だけ、という使い方なら、往路と復路の足を先に決めてから予定を立てたい。

所在〒425-0041 静岡県焼津市石津1143-1
アクセスJR焼津駅から南へ約3km・駐車場2か所(第2駐車場は建物裏)
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編集部のひとこと
焼津で魚を食べる、というと港の食堂を思い浮かべる。多幸はそこではなく、住宅地の側に立っている。地魚も釜飯もとんかつも、同じ盆の上で等しく扱われる一軒。四十年、この町の昼と夜と節目を引き受けてきた店の顔が、あの黒い看板には出ている。
マチノワ編集部
編集後記末

最後に、歩き方。

車のキーを握ったところから、この店の一日は始まる。焼津駅から南へ約3キロ、歩いて着く距離ではないので、まず駐車場の話をしておきたい。建物の前が埋まっていても、第2駐車場が裏手にある。看板にそう書いてあるので、慌てて別の店へ流れる必要はない。昼に使うなら11時30分から14時まで、料理のラストオーダーは13時30分。丼か定食を一つ選んで1,000円前後で収まる時間帯だ。魚から入るなら海鮮丼、腹を決めて食べるならとんかつ、麺が欲しい日は中華そば。迷ったらその日の気分でいい。どれを選んでも同じ厨房から出てくる。夜は17時から22時で、料理のラストオーダーは21時。一品と酒を合わせて2,000円前後が目安になる。カウンターに一人で座るのも、掘りごたつの座敷に何人かで沈み込むのも成立する。宴会や法事で使うなら30名程度まで受けられるが、この規模になると席の組み方が必要になるので、人数と用途を電話で先に伝えておきたい。釜飯を頼むなら時間に余裕を。定休は火曜で、加えて月に2回ほど休みが入る。営業時間や休みは変わることがあるため、出かける前に電話で確かめておくと確実だ。

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