港町の日常として出てくる、地魚の丼と刺身
看板の四文字のうち、多幸という店を最初に説明するのは「地魚」の二文字だ。海鮮丼を頼むと、盆の上に丼と小鉢と味噌汁とサラダが一度に載ってくる。丼の中身は、まぐろの赤身と脂ののった部位、白身、ほたて、甘えび、たこ、そして光り物。わさびは丼の上に直接のせられ、刻んだねぎが添えられる。一種類の魚を主役に据えて見せる構成ではなく、その日にある魚を横に並べていく組み方だ。焼津の港に水揚げがある町で暮らしていれば、魚は珍しいものではない。だから多幸の丼も、特別な日のごちそうという顔をしていない。昼に来て、ふつうに食べて、ふつうに帰る。その位置に魚が置かれている。Googleマップの口コミには酢飯の炊き加減に触れる声もあり、丼の土台にも手が入っていることがうかがえる。刺身は盛り合わせでも頼めるので、夜に酒を飲む側から入るなら、まずそこから組み立てるのが分かりやすい。魚が目当てで焼津に来た人にも、この一軒はきちんと応える。