シェフが50年弱を費やした「創作洋食」という選択
創作洋食という言葉は曖昧だが、この店が示すそれは明確だ。フランス料理の論理とイタリアンの柔軟性を組み合わせ、日本の季節食材を前に、シェフが毎回新しい解を編み出す。1976年の開店から約50年。その時間の中で、このスタイルを貫き通してきた。単なる洋食ではなく、料理を通じた時間体験そのものが、この店の提供物なのだと感じさせられる。フランス料理は『形式を守る厳密さ』。イタリアンは『素材を活かす柔軟さ』。その二つをどう両立させるか。シェフはその問いに、毎季毎シーズン向き合い続けてきた。だからこそ、訪れるたびにコース構成が変わる。春の筍、冬の根菜、夏の魚介。食材が変われば、その組み立て方も、ソースも、盛り付けも変わる。その試行錯誤の積み重ねが、『創作』という言葉の重みを作り出している。訪れる読者は、シェフの『その日の選択』を食べることになる。それは、プリセットされた『正解』ではなく、その瞬間の『最善』だ。そうした関係性の中で食卓は成り立つ。