世界の豆が、店内で焙煎される実感
ロースタリーフィトの最大の特徴は、その名の通り「焙煎」が店の中心にあることだ。エチオピア、グアテマラ、マンデリン、キリマンジャロなど、10種類以上の豆を世界各地から厳選し、来店客の好みに合わせてその場で焙煎を行う。つまり、ここで提供されるコーヒーは、工場で大量焙煎されたものではなく、その都度、その人のために焙煎された一杯なのだ。焙煎という営為が店の中で行われているという事実は、来店客にとって心理的な影響を与える。コーヒーを飲むという行為が、単なる「商品の消費」ではなく、「職人の手仕事を受ける経験」へと昇華するのだ。店内に漂う焙煎の香りも、その実感を深める。焙煎されたばかりの豆から立ち上る香りの中にいると、自分がコーヒー豆という農産物の季節性、地域性、処理方法の違いと向き合っていることが自然と腑に落ちる。スターバックスのようなチェーン店で、既製のコーヒーを受け取る体験とは、決定的に異なる。オーナーの伊藤さんが厳選した豆の物語——どこの山で、どのように育ち、どの季節に収穫され、どのような処理を経たのか——が、一杯に圧縮されているのだ。