殻ごと焼いた牡蠣に、チーズをのせる一皿
店が公開している料理写真の一枚が、殻付きの牡蠣にチーズをのせて焼いたものだ。ぐらつかないようアルミホイルで殻の下を支え、黒い角皿にのせて出す。表面のチーズはところどころ茶色く焦げ、その上に刻んだパセリ。皿の余白には粉チーズがこぼれていて、盛り付けを整えすぎない出し方をしていることが分かる。伊勢志摩は、的矢かきや浦村かきといったブランド牡蠣を抱える海に面した土地で、冬になれば県内外から牡蠣を目当てに人が動く。よりみちがどこの牡蠣を仕入れているかを店は公表していないので、そこは断定しない。ただ、伊勢で店を開いて、殻ごと火にかけた貝を看板の一皿として写真に出す——その選択の意味は、この土地に立ってみれば分かりやすい。海の幸を刺身で完結させず、チーズと焦げ目という洋の手つきを足している点も、居酒屋としての立ち位置をよく表している。魚介を食べに伊勢へ来た人が、夜にもう一度魚介と向き合える場所だ。牡蠣は仕入れも扱いも季節に左右される食材で、通年で同じ一皿が並ぶとは限らない。写真の料理を目当てにするなら、その日に出せるかどうかを電話で聞いてから向かうのが確実だろう。