マチノワ · 2026年 春号
2026-09-03
MINATO CHAYA IYESHI

ごはん処 湊茶屋、
湊町のあたらしい輝き。

伊勢といえば、伊勢神宮と宇治山田駅周辺の商業地を思い浮かべる人が多いだろう。しかし伊勢市は町によって全く異なる表情を持っている。伊勢市の西側、赤福で知られる川添町や、観光地化した宇治町とは打って変わって、湊町は港町としての歴史を抱えた、地元の人々が生活する界隈だ。湊橋を渡り、赤砂利が敷き詰められた一軒の建物が目に入る。古い民家を活かしたつくりで、2025年6月にこの場所に灯をともしたのが「ごはん処 湊茶屋」である。伊勢うどんをはじめとする麺類と丼ものを専門とする、新しく生まれた地元の食堂。食べログの評価は開業から3ヶ月で3.06点、62件のレビューを集めている。この店の開業とタイミングを共にして、湊町という場所そのものが、地元の人々の目に改めて映り始めているのかもしれない。

副題

古民家リノベーション、カレーうどん、地元密着。伊勢市大湊町の新しい食の拠点。

編集

マチノワ編集部

古民家リノベーション、カレーうどん、地元密着。伊勢市大湊町の新しい食の拠点。✦編集部厳選✦MINATO CHAYA IYESHI✦5 POINTS✦2026年 春号✦古民家リノベーション、カレーうどん、地元密着。伊勢市大湊町の新しい食の拠点。✦編集部厳選✦MINATO CHAYA IYESHI✦5 POINTS✦2026年 春号✦
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POINT5

古民家リノベーション、カレーうどん、地元密着。伊勢市大湊町の新しい食の拠点。。

編集部が選んだ5つのポイントを順にご紹介します。伊勢といえば、伊勢神宮と宇治山田駅周辺の商業地を思い浮かべる人が多いだろう。しかし伊勢市は町によって全く異なる表情を持っている。伊勢市の西側、赤福で知られる川添町や、観光地化した宇治町とは打って変わって、湊町は港町としての歴史を抱えた、地元の人々が生活する界隈だ。湊橋を渡り、赤砂利が敷き詰められた一軒の建物が目に入る。古い民家を活かしたつくりで、2025年6月にこの場所に灯をともしたのが「ごはん処 湊茶屋」である。伊勢うどんをはじめとする麺類と丼ものを専門とする、新しく生まれた地元の食堂。食べログの評価は開業から3ヶ月で3.06点、62件のレビューを集めている。この店の開業とタイミングを共にして、湊町という場所そのものが、地元の人々の目に改めて映り始めているのかもしれない。

POINT01
新旧融合の空間設計 · 伊勢市大湊町

古民家を活かしたリノベーション。建築そのものが食事体験を変える

ごはん処 湊茶屋の第一印象は、古い家を新しく生まれ変わらせた建築だ。赤砂利が敷き詰められた外観から、推して知るべし。この店が単なる『新しいうどん屋』ではなく、『場所の蘇生』という営みを意識している。かつての民家の形状や木組みを活かしながら、内装は洗練され、実用性と美しさのバランスが取られている。テーブル3卓と小上がり個室が配置されたこぢんまりとした空間は、席数を限ることで、ここが『公の食堂』ではなく『大切な人たちとの時間の場』であることを無言で伝えている。古民家のリノベーションは、全国で流行してから久しいが、この店が特別なのは、建築的な『新しさ』を前面に出していないということだ。むしろ、古いものを大事にしながら、必要なだけ新しくする。その匙加減が、訪れる人の心を落ち着かせ、時間を柔らかくしてくれるのだと思う。テーブル席で向かい同士に座る。小上がりの座敷では靴を脱ぎ、家に帰った時のようにリラックスできる。その場所の選択肢が複数あることが、この店の配慮を物語っている。食べ始める前から、この空間にいるだけで受け取るものがある。建築は無言で私たちに語りかける。そして優れた建築は、ただいるだけで心が満たされるのだ。

建築古民家リノベーション・平屋建
座席構成テーブル3卓 + 小上がり個室(座敷)
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POINT02
カレーうどん・伊勢うどん · 伊勢市

カレーうどんという選択。郷土料理から新しい看板を立てる

ごはん処 湊茶屋の看板メニューはカレーうどんである。食べログの複数のレビューで『新しく出来たうどん屋で、カレーうどんが美味しい』とのコメントが見られ、開業から数ヶ月の新参店がいかに『この看板メニュー』で支持を獲得しているかが伝わってくる。伊勢といえば、伊勢うどんという郷土料理が存在する。タレの濃い、塩辛いうどんであり、地元民は幼い頃からこの味に親しんでいる。そんな『伊勢うどん』という圧倒的な文化があるなかで、敢えて『カレーうどん』を看板にするという選択は、挑戦的だ。ただし、これは『伊勢うどんへの挑戦』ではなく『伊勢うどんとの共存』と言える。メニューには伊勢うどんも4種類用意されている。つまり、この店は伊勢の麺文化全体を受け継ぎながら、その中に『新しい選択肢としてのカレーうどん』を組み込んだのだ。新店舗だからこそ、新しいメニューを打ち出せる。でも、地元の食文化を無視した『流行のカレーうどん』ではなく、郷土と新しさを融合させた形での提案。カレーうどんを食べるために五十鈴ケ丘駅から湊町に足を運ぶ人が、やがて地元民になっていく。

看板メニューカレーうどん
メニュー構成うどん4種、そば2種、そうめん、丼類他
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POINT03
麺・丼・和食 · 伊勢市

麺とご飯。伊勢の食文化の縮図がこの一軒に集約されている

ごはん処 湊茶屋を『うどん屋』と一言で呼ぶのは、正確ではない。この店は『伊勢の食文化を小ぶりな一軒に集約した店』だと言った方が正しい。メニュー表を見ると、うどん4種、そば2種、そうめん、そして豚味噌丼を始めとする丼類が並ぶ。これは『迷いの余地なく、何を食べたいか決まっているお客さん』向けではなく、『この時間、この気分にぴったりの一杯を選びたいお客さん』向けの構成だ。冬の昼。味噌の香りが心地よい、あたたかいカレーうどん。夏の夜。冷たく絞られたそうめん。仕事の合間の昼食。豚味噌丼と、迷わず注文できるメニュー数。こうした時間軸や季節軸、そして顧客のシーン軸に応じて、メニューにはあえて幅を持たせている。実際、食べログのレビューを見ると、同じ人が複数回訪れ、毎回違うメニューを注文している様子が伺える。つまり、この店は『ファンを作る店』なのだ。一度来たら、次に来るときは『今日は何にしようか』と迷ってながら、また足を運ぶ。その時間軸の中で、カレーうどんを食べ、そばを食べ、丼を食べと、通うたびに違う一杯を選べる。2025年6月開業という新しさと、これだけの厚みを持つメニュー構成を同時に持つ店は珍しい。

メニュー多様性麺5種類 + 丼類複数 + 季節メニュー
再訪性何度も来たくなる構成
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POINT04
地域密着型飲食文化 · 伊勢市湊町

湊町という立地が持つ、観光地化されない『地元性』

伊勢市の東側は神宮参拝者で年通して賑わい、宇治町や川添町は観光地化されている。それに対して西側の湊町は、港町としての歴史と、地元民の生活が今も息づいている場所だ。赤福で知られる『参宮線をはさんだ向こう側』である。ここに古民家をリノベーションした新しい食堂が出来たということは、実は象徴的だ。なぜなら、この立地の選択そのものが『観光地ではなく、地元のための店』という意思表示だからだ。最寄り駅は五十鈴ケ丘駅(伊勢鉄道)で、伊勢駅や宇治山田駅からはやや離れている。つまり『わざわざ行く人向け』の立地であり、『ぶらっと立ち寄る観光客向け』ではないのだ。ごはん処 湊茶屋の隣近所には大型チェーンもなく、町の表情は落ち着いている。朝8時、近所のおばあさんが通勤?散歩?をしている。昼11時、サラリーマンが一人、カウンターに座っている。夜19時、家族連れが小上がり個室で食事をしている。こうした時間帯ごとに異なる客層が、この店を『自分たちの食堂』と認識している。その過程を、これから何ヶ月、何年もかけて目撃できるのが、新店舗の醍醐味だ。観光ガイドには載らないが、地元民の心の中には映る。そういう『小さな存在』になることが、この店の目指している道なのだと思う。

立地特性港町・観光地化されていない地域
最寄り駅伊勢鉄道五十鈴ケ丘駅 約3.2km(徒歩40分程度)
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POINT05
アクセス・街歩き · 伊勢市全域

五十鈴ケ丘駅から湊町へ。徒歩40分の『移動そのもの』が体験

五十鈴ケ丘駅からごはん処 湊茶屋への3.2kmの道のりは、徒歩で約40分である。この距離と時間は、決して『遠すぎる』わけではなく、『ちょうど良い』距離だ。駅を降りて、伊勢市の住宅街を北西へ進む。賑わったメインストリートではなく、地元民の生活感が漂う道をたどる。商店街の名残が所々に見られ、かつての商業の脈動が感じられる。そして湊橋に近づくにつれ、景色がゆっくりと変わっていく。川を越え、赤砂利が敷き詰められた一軒が目に入る。その40分の移動が『神宮参拝ルート』ではなく、『伊勢という街の日常を知るルート』になっているのだ。駐車場があるため、車での来店も当然可能だが、電車とバスを組み合わせ、あるいは駅からのタクシーを使う来店者もいるだろう。営業時間は月火金土が11:00-15:30、17:30-19:30、日が11:00-19:30の通し営業、定休日は水木である。支払いは現金のみ。価格帯は¥1,000-¥1,999程度で、1000円未満のメニューもあれば、2000円を超える季節限定メニューもある。食べログのレビューをひとつ参考にするなら、『新しくできたうどん屋で、カレーうどんが美味しい』というシンプルな評価が、この店のすべてを物語っているような気がする。訪問の際は、営業時間や定休日、メニューの詳細は食べログの最新情報を確認することをお勧めする。この店は『神宮参拝の帰りに立ち寄る店』ではなく、『わざわざ来店する価値のある店』だ。その価値が、建築か、メニューか、立地か、あるいは出会う人物かは、訪れるたびに変わるのだろう。

営業時間月火金土 11:00-15:30, 17:30-19:30 / 日 11:00-19:30
定休日水曜・木曜
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編集部のひとこと
古民家のリノベーションは、新しさを前面に出すことではなく、古いものへの敬意の形だ。ごはん処 湊茶屋は、そういう『引き算の美学』を実践している店だ。2025年6月の開業から、わずか3ヶ月で食べログの評価を獲得したのは、メニューの美味しさだけでなく、その空間と立地が『ここにしかない時間』を約束しているからなのだろう。
マチノワ編集部
編集後記末

最後に、歩き方。

湊町を舞台に、一つの物語が始まった。五十鈴ケ丘駅から40分の歩行は、単なる『移動』ではなく、伊勢という街の二つの顔を同時に体験するプロセスだ。駅前で借りた地図を頼りに、あるいは本能のままに、赤砂利の前に辿り着く。『ここが、あの店か』という発見の喜び。ドアを開けると、古木の香りと、新しい空間のコントラストが出迎える。昼間に訪れるなら、明るい光が古民家の梁を照らし、その作りの丁寧さが目に飛び込む。夜に訪れるなら、暖かみのある照明が、より家的な雰囲気を高める。メニューを前に『何にしようか』と悩む時間も、この店の価値の一部だ。カレーうどんを選ぶもいいし、伝統的な伊勢うどんを選ぶもいい。丼を選んで、素早く食事を終える選択もある。訪問後、伊勢市の別の場所へ移動するのであれば、この40分の道のりでも街のもうひとつの表情に触れられる。次に伊勢を訪れるときは、神宮参拝だけではなく『湊町への小旅行』を予定に入れてみてはいかがだろうか。

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